東京・板橋で20年以上続くラーメン店は、取材当日も賑わっていた。珍珍珍は地元に愛される店、豚骨+鶏ガラ出汁の名物「トンコクラーメン」は他にない味と常連客がイチ押しするメニュー。珍珍珍は人気のチェーン店として、かつて関東を中心に100店舗以上を展開していた。しかし、現在は高島通り店だけ。残る唯一のオーナー・山崎成人さんは69歳、38歳で珍珍珍の店舗オーナーとなって以来人気の味を守り続けてきた。しかし、営業は3月30日まで。閉店・廃業することになった。山崎さんは独身で跡継ぎがいないため、この店は自分で終わり。最近は平日の売り上げに苦しんでいたが、最終日には大勢の客が来ていた。物価高に負けじと踏ん張ってきた姿を馴染みの客は知っている。午後6時、用意していた200食は閉店時間の前に売り切れた。最後の客は20年以上通っていると言う夫婦。別れ際には記念にどんぶりが欲しいと言い、オーナーの山崎さんに「長い間ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉をかけていた。今後は高齢者施設の送迎ドライバーに転職するという山崎さん。跡継ぎがいない影響で倒産・廃業が増加している日本。一昨年、史上最悪を記録してそのまま高止まり。さらに今年、団塊世代が75歳以上になった。日本は超高齢社会に突入した。待ったなしの後継者問題、店主たちの技と思いを守るすべはあるのか。