中国総局長谷川記者の解説。中国の表向きの目的と本当の狙いとも言える。まず表向きの目的は環境対策。習近平政権は自らがいかに気候変動対策に積極的かということを盛んにアピールしている。2016年当時は大気汚染物質PM2.5の値が日本の環境基準の10倍以上に達することもあった。現在も冬場は時々PM2.5は確認される日もあるが、以前に比べると大幅に改善している。中国は2010年代から環境対策に力を入れていて、街中には緑色のナンバーを付けたEV(電気自動車)が多く走っている。習近平国家主席は、2060年までにCO2の排出を実質ゼロにすると宣言。総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は現在58.3%にのぼり、大きく伸びている。中国メディアも、世界から中国の取り組みが称賛されたとアピールしていて、COP29を報じた中国共産党系の新聞「環球時報」では中国の努力が認められたと報じていて、中国は他の国よりも遥かに早いスピードで再生可能エネルギーを導入したと自画自賛している。米国大統領選でトランプ氏は地球温暖化対策の枠組み、パリ協定から離脱する方針を示していて、気候変動問題への取り組みを後退させる恐れがある。このため中国にとって、この問題は米国にとって代わって世界のリーダーとしてアピールする絶好の機会となる。一方で、国際社会から批判を浴びているのは中国の立ち位置。COP29では先進国が途上国の気候変動対策を資金面でどこまで支援するか、大きな争点となっている。世界第2位の経済大国で温室効果ガスの排出でも世界一の中国は今でも自らを途上国としている。各国からは資金を提供する側に回るよう求められている。国が強力に推し進めたEV車だが、過剰生産しすぎて空き地に数百台が放置され、まるでEVの墓場のようになっている場所もある。