日本が世界に誇る和食文化。その中心にあるのが「魚」。しかし、今、魚の年間消費量はピーク時と比べて半分に落ち込んでる。魚料理が嫌われる理由の1位は、骨があることだという。琵琶湖にほど近い滋賀県立大学では、魚離れを解決する養殖がおこなわれている。杉浦省三教授(60)が新たな技術開発に取り組んでるのは、魚の骨を柔らかくする研究。秘密は”エサ”だという。リンを取り除いたエサで魚を養殖すると、骨に含まれるリン酸カルシウムの量が減り、骨が柔らかくなるという。杉浦教授は独自に、このエサを開発し、実用化にむけてコスト削減に取り組んでいる。現在、技術が完成しているのはコイ、フナ、ニジマス、ティラピア、モロコの5種類。魚の健康状態には全く影響しない。杉浦教授は大学を卒業後、シリアの養殖場、ハーバード大学の研究室などで魚の養殖技術を学ぶ。日本に戻ってきたのは20年前。海外で得た技術を活かした養殖の研究を始めようとしたが、学校の施設は使えず、かやぶき屋根の家を購入し、自宅と実験場を整備し、研究を行っていたという。井戸水の温度は年中一定に保たれており、魚に最適な飼育環境となっている。杉浦教授が30年以上研究してきたリンを取り除いたエサ。骨の柔らかい魚を作るだけでなく、海洋汚染などの環境汚染の負荷もおさえる。去年、世界的な学術誌から魚のエサの設計に関する論文を打診された。杉浦教授は、「世界中でこういう研究をしてる研究者は他にいない。渡しがやめたらもう誰もやらない。だからやるしかないと思う」と語った。