五輪の開催を目前に、フランス・マクロン大統領が、「危険な賭け」とも指摘される「議会下院の解散」の決断を下した。約3年の任期を残しながら、なぜ今解散し、選挙で国民の信を問うことにしたのか。マクロン大統領は「今夜、国民議会を解散する」と9日、急きょテレビ演説を行った。背景にあるのが、EU(ヨーロッパ連合)の予算承認などを担うヨーロッパ議会の選挙での敗北。27の加盟国の有権者が、それぞれ自国の政党が擁立した候補者に投票した結果、自国第一主義的な考えの右派や極右政党が議席を伸ばした。特にその傾向が顕著だったのがフランス。極右政党の国民連合が、マクロン大統領率いる与党連合に対し、獲得議席で倍以上の差をつけて大勝する見通しになった。フランス・極右政党「国民連合」率いるルペン氏は「世界の人々を多いに苦しめてきたグローバリズムを終わらせるものだ」と述べた。これを受けて、マクロン大統領は、ヨーロッパ議会とは別のフランスの議会下院の解散に踏み切った。マクロン大統領はナショナリストやデマ発信者の台頭は、フランスだけでなくヨーロッパにも危険」と述べた。なぜ解散したのか。フランスの議会下院の選挙は、1回目の投票でどの候補も過半数の票を得られなかった場合などに、候補者を絞り込んで決選投票を行う仕組み。第一生命経済研究所・田中理主席エコノミストは「ここに大統領の思惑がある」と分析し、「決選投票制という選挙制度は、大統領会派には有利に働く可能性がある。極右首相を恐れる有権者が、最後は大統領支持に回ると期待し、議会の解散総選挙に打って出た」、思惑どおり、極右政党の勢いを止められるのか「非常に賭けに近い。極右政党はかつてのユーロ(通貨)離脱のような極端な政策を封印。普通の政党としてフランス国民の間で受け入れられつつある。必ずしもマクロン大統領の賭けが成功するとは限らない」と述べた。