依頼人は、東京・目黒区の関戸さん。株式投資で儲けたお金で、美術品を収集してきた。今回のお宝は、柿右衛門様式の皿。酒井田柿右衛門の窯が中心となって、海外への輸出向けに制作された柿右衛門様式。ヨーロッパでは、中国製の磁器を珍重していたが、明王朝の崩壊で磁器の輸入が困難となり、オランダ東インド会社は、日本の伊万里焼に目をつけた。柿右衛門様式の磁器は、薄くて軽い。皿や鉢は、ろくろ引きした生地を型にかぶせて成形する。型を精巧に作り上げ、量産に成功した。壺などには、薄い粘土板を貼り合わせる板作りという技法が用いられた。最大の特徴は、濁手と呼ばれるコメの研ぎ汁のような白い生地。その上に施された絵や模様には、赤・青・緑・黄色の透明感のある上絵の具と、少量の金が使われている。ヨーロッパに輸出された柿右衛門様式の磁器は、人気を博し、ミルキーホワイトと呼ばれ、イギリスなどの王侯貴族たちを虜にした。ドイツ・マイセンでは、柿右衛門様式を手本にして磁器が作られた。依頼品は、直径約21センチ。松竹梅に鳥2羽が描かれている。当時作られた柿右衛門様式の多くは海外に輸出され、現存数はごくわずか。