国内外で注目されている技術の人工赤血球。研究を指導するのは、県立医科大学の松本雅則さんのチーム。救急医療に欠かせない輸血にとって革新的な技術になるという。人工赤血球のメリットは常温で長期保存ができ、血液型をとわない。人の赤血球は、ヘモグロビンと呼ばれるタンパク質の膜が覆っている。この膜が時間とともに劣化しやすいために、輸血用の血液は長期保存が困難。さらに、膜によって決まる血液型で輸血の組み合わせに制限がある。人工赤血球は人の血液を材料に、膜だけを人工物に取り替えている。赤血球の膜の交換が今までの輸血の課題を解決した。今までは、巨大な冷蔵設備を積むことができないドクターヘリや救急車などには、輸血用血液を打ち込めなかった。さらに病院に搬送した後も、血液型の検査に時間がかかっていた。すぐに輸血ができないことに医師たちは危機感を抱いていた一方、人工赤血球は常温保存が可能で血液型問わないために、迅速に輸血することができる。医療技術を実用化するためには製造した後に人の体で安全性を確かめる知見を経る必要がある。現在、人工赤血球は治験を行う段階にまできている。松本さんたちは今年中に病院での治験を実施する予定。今は本番さながらの訓練を行っている。しかし想定しきれない課題が次々に出てきたという。