高知県仁淀川町の上久喜地区はどこを見渡しても花で、集落全体が花で彩られている。家や畑をすっぽり包むように咲いているのは“ハナモモ”で庭木として楽しむ植物で、まさに桃源郷の様。実はこの風景は一人の村人が作り出したものなのです。三年前に亡くなった平成の花咲か爺さんこと、日之裏隆寛さん。山里を花で賑やかにして人を呼びたいと20年程前から“ハナモモ”を植え始めました。現在手入れをしているのは妻の輝子さんと息子の博さん。先祖代々人々が耕してきたお茶などの段々畑、過疎や高齢化で放置されると直ぐに荒れてしまう。そこで植え始めたのが“ハナモモ”だった。里の暮らしと賑わいを守りたい、それが日之裏さんの願いだった。”ハナモモ”が咲き誇る畑そこは多くの鳥たちの楽園。鳥たちのお目当ては花に寄ってくる昆虫など。 中でも多いのがヤマガラ。輝子さんは毎年この鳥がやってくるのを楽しみにしている。食べ物を捉えたヤマガラが向かった先は輝子さんが暮らす家の軒先。ここにはヤマガラのために作った巣箱があるのだ。中には生まれたばかりの雛が5羽。親鳥がせっせと食べ物を運ぶ。微笑ましい親子の姿を輝子さんはそっと見守っている。”ハナモモ”の咲く畑と巣箱を何度も往復して食べ物を運ぶヤマガラ。鳥たちの子育てにとってまさに絶好の環境がここにはある。平成の花さか爺さんこと日之裏隆寛さんが作り初めた桃源郷。今では町のあちこちにも木が植えられ人が集まるようになった。”ハナモモ”の花が人にも生き物にも恵みをもたらす里山だ。
