岸田元総理がフィリピンを訪問した狙いについて、今回の訪問の発端は2022年に岸田内閣が提唱したAZEC=アジアゼロエミッション共同体構想にある。日本とASEAN9カ国、オーストラリアによるエネルギー安全保障と経済成長、脱炭素を同時に実現するための枠組みで、岸田元総理は「石炭火力に頼るアジアでは欧米諸国の石炭廃止論とは一線を画し、各国の事情に応じた形で段階的に転換を進めなければならい」として、石炭にアンモニアを混ぜて発電する日本の技術を活用するなど柔軟なエネルギー転換を促してきた。今回のホルムズ海峡の封鎖により、原油の供給懸念が続く中、国家の生命線であるエネルギー供給の多様化はさらに進めるという機運がアジア諸国の中でも高まっていて、今回の岸田元総理の訪問にもつながったという。中東情勢の緊迫化を機に世界の脱炭素化はどこまで進むのか。露によるウクライナ侵攻やトランプ政権発足後、欧米では脱炭素に逆行する動きがある。ホルムズ海峡の封鎖で浮き彫りになったのが日本を含む各国がエネルギーを中東に依存しすぎていることのリスク。各国は中東地域以外の原油の調達先の多様化を進める一方で、エネルギーを自国で賄えるようにエネルギー安全保障の見直しも迫られている。高市政権でも原子力の次世代型革新炉であるSMR導入も含めて化石燃料からの現実的な移行を進める政策を推進しているが、今後、こうした分野への民間による投資や研究開発の動きは広がっていくとみられる。
