香港には、中国政府系の企業が運営する大型書店・民間企業が運営する書店・主に個人経営の独立系書店の3種類の書店がある。独立系書店では、民主派の弁護士や元政治家の本を取り扱う店舗もあり、少なくとも20軒以上あるとしている。2年前に閉店した独立系書店の店主が、東京で期間限定の本屋を開いた。東京・世田谷区の廃校をリニューアルした複合施設。その一角にあるイベント会場で、7月~9月はじめまで香港の書店が開かれた。店主のシャロン・チャンさんは、2年前からこのイベントのために準備を重ねてきた。今回販売したのは、香港の独立系書店で売られているエッセー集や紀行本など。日本の読者に多種多様な、香港の作家の作品を知ってもらいたいと厳選した。香港版と日本版がある絵本、香港の絵本作家が新潟を旅したときに出会った日本の原風景を描いている。2018年、香港の住宅街の一角にあった花屋の跡地にシャロンさんが開いた小さな書店。読書会や書道に関するイベントなども開催し、民主派の弁護士・脚本家・学者など集う場になった。しかしシャロンさんは、2年前に閉店を余儀なくされた。トークイベントに登壇した香港在住の翻訳者・大久保健さんは、仕事の傍ら香港の独立系書店で働く人々を取材してきた。大久保さんはこの日、シャロンさんが書店を閉めるまでの経緯を説明した。発端は書店の入口のタイル。3年前、シャロンさんは土地管理の政府部門からタイル施設は「土地の違法占拠になる。1カ月以内に現状復帰せよ」と警告を受けた。シャロンさんは即座にタイルを撤去した。しかし今度は、消防署から消火設備の不備の指摘があり、さらに衛生当局からネズミを監視する機械設置を求められた。行政による立入検査が度々発生し、対応に追われたという。こうしたなか、シャロンさんは閉店を決意した。シャロンさんが書店を閉じた年、香港ではスパイ行為など国家の安全を脅かす行為を取り締まる国家安全条例が新たに施行。さらに、今年に入り、香港政府が4軒の独立系書店関係者を国家安全条例違反の疑いで逮捕するなど、当局による取り締まりが相次いでいる。このうち2軒は中国政府に批判的な論調で知られている「リンゴ日報」の創業者の伝記を取り扱っていたと現地メディアは伝えている。先月、保安局局長は「今後も書店関係者の違法行為を見逃さない」と表明、一方でその定義は明らかにしなかった。シャロンさんはいま、日本での新たな本の出版に力を入れようとしている。同じ志をもつ編集者とともに、本がつなぐ無限の可能性を求めこれからも試行錯誤を続けていこうと考えている。
