文田健一郎選手がグレコローマンスタイルでは1984年のロス五輪以来となる金メダル獲得。レスリングにはグレコローマンスタイルとフリースタイルの2つがあり、文田選手は上半身への攻撃のみの豪快な投げ技が出ることも多いグレコローマンスタイル。文田選手は初戦と準々決勝ではテクニカルスペリオリティで完勝した。文田選手の強さが一番わかりやすく出たのが準決勝。相手はキルギスのZシャルシェンペコフ選手で世界ランキング1位。この選手に去年の世界選手権で文田選手は負けているが、今回は4−3でポイント勝ちしている。ポイントは世界一を退けた「守備力」と狙いすました「反り投げ」。第1ピリオドではパッシブ(消極性)を取られて1ポイント相手に与えられた。消極性を指摘された場合は相手が有利な体制からスタート。返されてしまったら相手のポイントになる。相手が力を出せないところにクラッチをずらすのがポイント。下にいながら有利に誘導するのが文田選手が強みだという。得意技の豪快な反り投げを可能にするのは、立ったままブリッジできるほどの柔軟性。背中が柔らかく、反り返る角度が深いため、相手を背中から叩きつけることが可能になる。相手は受け身を取れないために高得点が期待できる。文田選手は「物心つく頃には前転したり、跳ねたり、ブリッジしたり、遊びの中で柔軟性が培われた」と話している。試合後は「一番は3年前の決勝のことを思い出します。本当に紆余曲折あって、本当に経験したことのないような苦しい期間があったりして、それと同じくらい楽しいこともあって、トータルしてプラスが上回っていたので、今回優勝出来たのかなと思います」と話した。文田選手の一番大きなエネルギー源だったのが家族の声援。妻・有美さんは「やっと終わったとしか思わなかった」とし、東京五輪が終わったという感じか?との質問に「ずっとその事を考えていた。重りだったものがパーンと外れた感じ」と話した。