長い近代オリンピックの歴史において1つの大会で1つの国や地域がレスリングの全階級を制覇したことはない。女子は2004年のアテネ大会から正式種目となり、日本は金メダルの6割以上を獲得してきたが、6階級中4つが最多。最重量級は金メダルがなく、フィジカルの差を見せつけられてきた。パリ五輪でその偉業に挑むのが鏡優翔。この階級で長く活躍した浜口京子さんは「大きな海外の選手にタックルで勝つのはすごくリスクがある」と語るが、鏡はタックルで海外勢に挑んでいる。去年の世界選手権では全ポイントの7割をタックル起点で奪い、日本選手としては20年ぶりとなる最重量級優勝を果たした。鏡は自分より体重が軽い男子選手を相手に練習。より俊敏な選手を相手に足元に飛び込むタックルを繰り返した。鏡のタックルを体重が20キロ以上軽い藤波のタックルと映像で比較した。鏡はどんなにきつくても「かわいい」の掛け声を繰り返す。