仏師・円空は荒々しい削りでありながら優しい表情の仏像を彫ったことで知られ、彫った仏像の数は5300体ともいわれている。飛騨地方で活動を行ってきた円空だが、3月30日まで三井記念美術館では特別展「魂を込めた 円空仏―飛騨・千光寺を中心にして―」が開かれている。製材された木を使わないことが特徴で、「地蔵菩薩立像」も漆などのツヤを出さず木の木質を表現するとともに、ノミの削り跡を残したままとしているのが特徴で背面を彫らないのだという。「両面宿儺坐像」は大和朝廷に反抗したことで征伐された飛騨の豪族だが、地元では地域を守ったと親しみを持たれる鬼神・両面宿儺を題材としたもので、2つの顔・4本の腕と足を持ち慈愛と憤怒を持つ様子が描かれている。当時は日本書紀を限られた人しか読むことは出来ず、円空は博識な人物だったと見られる。自身も修行僧でありながら、和歌も1700首残し「秋はきぬ 紅葉は宿にふりしきぬ 道ふみ分て かく人もなし」というもので、円空仏を数多く所蔵する千光寺と飛騨高山の秋の風景を詠んだものとなっている。修行僧として全国で仏像を製作し、円空を綴った書物は少なく円空の人物像は伝記を集めたでしかないなど今も謎多き人物となっている。5000体を超える仏像を手掛けてきたが、自分が何をした人物なのかを書き綴らなかったことで謎に包まれた人物となったのだという。欲望など煩悩を悟りに変えるとされる愛染明王の仏像は手が縮こまっているのが特徴で、樹木の幅によって表現が限られることがあるものと見られるが、ここまでして1本の木から仏像を彫ることにこだわったのには、1本の木自体に樹神が宿るという考えを最重視したことがあると見られる。一方で歌の聖人といわれる歌人・柿本人麻呂の坐像を手掛けたこともあり、和歌への情熱が感じられる作品となっている。
住所: 東京都中央区日本橋室町2-1-1
URL: http://www.mitsui-museum.jp/
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