会社を引き継ぐ担い手がいないため廃業する企業が増える中、注目されているのが三重県。後継者がいない割合が6年前は7割近くだったのが、ある取り組みを始めた効果もあり、ことしの調査では全国で最も低い34%にまで低下した。三重県が後継者問題に力を入れ始めたのは6年前。担当するのは元銀行の幹部に、大手百貨店で28年間バイヤーを務めた男性。多種多様な仕事を経験したおよそ40人がコーディネーターになり、事業承継の仲介役を果たしている。三重県が特に力を入れているのは、まだ事業承継を考えていない段階から後継者を仲介すること。そのために県内の中小企業を訪問し、経営者の意向を確認。その数は県内の中小企業全体の半数、2万3700件に及ぶ。早めの仲介で成功した事例がある。コーディネーターの石垣弘美さんが、3年前に気にかけていた伊藤一男さん。いなべ市で50年以上養鶏業を営んできた。3人の子どもがいるが継ぐ意思はなく、廃業もやむを得ないと考えていた。そこで石垣さんが提案したのが、同じ市内で業績を伸ばしていた車の部品会社に事業を売却し、養鶏を引き継いでもらうこと。当時この会社は知名度を高めるために、ものづくりの体験施設の建設を計画していた。石垣さんは、その施設にカフェを併設して伊藤さんの卵を使ったメニューをウリにすれば、双方にメリットがあると考えた。施設は2年前に完成。石垣さんのねらいどおり、地元の人気スポットになった。伊藤さんの養鶏は部品会社の事業として存続、部品会社の社員に飼料の配合などのノウハウを伝えている。NHKでは地域の経済や働き方の問題の解決に役立ちたいと、会社の未来プロジェクトをスタートさせている。事業承継については、今夜放送の「クローズアップ現代」でも詳しく伝える。