東京・下北沢駅から3分ほどのアパートの一室にあるのは年間5000本もの傘を修理する専門店「傘地蔵」。この店、訪れる人にとっては最後の頼り。決して修理の依頼は断らない。訪れるお客さんの人生模様を取材した。傘の修理依頼が増えるという6月。店主の山口佳彦さんは修理歴10年以上の職人。傘を片手に電車で1時間以上かけて来た20代女性。バッグから取り出したのは持ち手部分。電車で揺れた拍子に床にぶつけてしまい折れてしまったという。内側の鮮やかな花柄がお気に入りの傘。数年前、新社会人になった妹が給料でプレゼントしてくれた一本。部品を取り寄せれば修理可能。修理から接客まで1人でこなす山口さん。どうしても時間がかかるため修理待ちの傘は100本超。修理には10日~1か月ほどかかる。都内在住の57歳の女性。骨の折れてしまった傘は替えのきかない1本だという。社会人なりたての頃、百貨店で奮発し約1万円で購入。しかし部品が今と違っていた。傘に合うよう部品をミリ単位で調節。修理代は1650円。依頼から11日後、傘を受け取りに娘と訪れた。大切な傘は娘も一緒に使っていくそう。いくつもの傘を蘇らせてきた山口さん。いま使っている傘はビニール傘。実は去年まで約3万円のブランド傘を使用していたが、お客さんから依頼が来たものの、パーツの調達が難しく、自分の傘を修理に使ったという。山口さんは「完成して傘として使えるようになって、お渡ししたときに笑顔になったりする、それを見ると嬉しく思います」と話した。