中国・上海にある中古車の販売拠点には、中国メーカーだけでなく日本や欧米メーカーの車も並んでいる。中国最大手・BYDのドルフィンの走行距離は、工場から販売拠点までの48km。性能に問題はなく、新車に比べて80万円ほど安くなっている。中国の自動車市場で、こうした「ゼロキロ中古車」が目立ち始めているという。新車の価格のままだと売り抜けないため自動車各社は中古車として値段を引き下げ、少しでも新たなモデルの生産や技術開発に資金を回そうとしている。こうした「ゼロキロ中古車」は8台に1台という比率まで上昇していて、当局は警戒感を強めている。共産党の機関誌「人民日報」で特に悪質だと指摘されたのは、自動車業界の「内巻」。過当競争で消耗戦が続く状態を指す言葉で、加熱する値引き合戦が問題視されている。新車市場でもBYDが最大100万円程の値下げに踏み切ると各社が後追いし、半額程度に値引きするケースも出ている。新車の販売台数の半数近くがEVなどの新エネルギー車となった中国は、内巻のもとで業界の利益率が約4%と過去最低水準に落ち込み、部品メーカーに対する支払いの遅れも常態化している。習近平国家主席もこの内巻を打破する姿勢を打ち出すなど、国家レベルの問題に発展している。みずほ銀行ビジネスソリューション部の湯進上席主任研究員は「自動車産業の利益率低下になると、地方経済や雇用に大きな影響を与える」などと指摘した。