テーマは「孤高の仏師“円空”後編」。1本の木から生まれる優しくも力強い作品の数々。64年の生涯で5000体以上の仏像を残した円空の真意は謎に包まれている。東京・日本橋の三井記念美術館で特別展「魂を込めた円空仏−飛騨・千光寺を中心にして−」が3月30日まで開催中。円空の代表作の一つ「三十三観音立像」(岐阜・千光寺)を紹介。観音菩薩は苦難や災害から人々を救うため三十三の姿に変身したとされている。展示されているのは33体のうち31体。所蔵元である千光寺の記録には「近隣の住人が病気の際に持ち出し、病気平癒を願ったという」と記されている。迫力のある作品が目立つが、一際変わった作品も。「如来坐像」(千光寺)の大きさは約5cm。円空仏の中でも一際繊細さが際立つ作品。使う木材によって質感が変わるのも円空仏を楽しむ一つのポイント。円空の生まれである岐阜をはじめ、修行で訪れた地で出会う神木がバリエーション豊かな円空仏を生み出している。円空仏の中では人以外のものをモデルにした作品もある。「稲荷三神坐像」(岐阜・錦山神社)は狐をモデルにしたとみられる。円空は神様の中でも稲荷のようなものも信仰した。稲荷とは五穀豊穣を祈願する“農業の神”や商売繁盛を願う“富の神”としても信仰されている。神仏習合、神への信仰と仏教信仰が融合・調和する考えを持っていた円空は神をモデルにした仏像を数多く残している。「八大龍王像」(千光寺)を紹介。顔を横から見てみると逆立つ龍の髪や鼻筋から先が前に突き出ている。インドの蛇の信仰が中国に入ると龍の信仰に変わった。龍は水に関する信仰がある。円空は修行で全国を旅する中、訪れた地が抱える苦難を人々が乗り越えられるような仏像を彫っていたのかもしれない。仏教やヒンドゥー教に登場する伝説上の霊鳥「迦楼羅」(千光寺)。仏教では煩悩を食らうとされ、病気平癒や厄よけを願う守護・加護の象徴として信仰されている。仏師であり僧侶でもあった円空が生涯彫り続けた仏像は現在5000体以上発見されている。館長は「信仰の対象として民に配ったとか与えたとか言う(記録)は一切なくて、ただ、こういう像が当時の人々の信仰の対象であったとは言える」と話した。