続いては杉並区で地下鉄の中野富士見町駅から徒歩2分ほどに地元で人気の中華料理店「天津飯店」があった。中に入ると元気な声で迎えてくれる昭和の香り漂う店となっていた。この店に構えて47年、近くで働く人達で賑わう町中華である。切り盛りするのは張さん夫婦であり鍋を振るうのは夫の志雄さん、主に接客を担当するのは妻の美枝さんである。そんな天津飯店の看板メニューは「ラーメン」である。豚と鶏のダシを強めに感じるスープはあっさりなのに濃厚でどこか懐かしい味わいとなっていた。他にも「ムースーロウ定食」の人気で濃いめでピリ辛な味付けはご飯が進むと評判である。天津飯店の1日が始まるのは午前9時で美枝さんはシャッターを開け、週替りのメニュー表の準備からスタートとなっていた。仕事のしすぎが災いしてかつま先の骨が変形してしまい、痛みをこらえながら階段を下っていた。午前9時半、志雄さんも店に到着しまずは豚ガラと鶏のもみじからダシを取り、焼きそばに使う麺の準備をしたり肉やザーサイを切ったりと料理全般の仕込みとなる。この日は娘さんも手伝いとして加わり、午前11時半にいよいよ開店となった。開店するとすぐに客が来て、麻婆豆腐そばの注文が入ると美枝さんは厨房の奥へ。持ってきたのは麺で志雄さんが麻婆豆腐作りをするのを確認し、絶妙なタイミングで麺を投入。そして娘さんが麺をあげるとすかさず志雄さんが麻婆豆腐を乗せて完成。無駄が一切ない、流れるような連携プレーとなっていた。昼時になると店が混雑し、美枝さんは客席と厨房を言ったり来たりで大車輪の活躍となっていた。そんな中、家族連れの常連客を2階へと案内。忙しそうな美枝さんを気遣って、お客さんがお茶をセルフサービスしていた。そして子供が帰る時にはお菓子をプレゼント。店の誕生は昭和53年で元々は志雄さんの父が営んでいたが、病気で亡くなり別の店で修業していた志雄さんが20歳で店主になった。当時は周りに飲食店が多く、始めは売り上げが上がらず苦労したとのこと。その後次第に働く人たちが増え、客足が伸び軌道にのってきたという。そして平成4年に美枝さんと結婚し以後30年以上に渡り夫婦で店を守り続けている。
住所: 東京都中野区弥生町5-24-4