きょう第171回芥川賞と直木賞の選考会が行われる。このうち最も優れたエンターテインメント小説に贈られる直木賞の候補作は5つ。その1つが「令和元年の人生ゲーム」。20代を中心とするZ世代の若者たちが主人公。作者は麻布競馬場さん。顔や本名を公表せずに活動している現役の会社員。今回、候補となった作家の中で最年少の32歳。デビュー2作目、初の連作小説。麻布さんに小説に込めた思いを聞いた。「令和元年の人生ゲーム」は平成の終わりから令和に移る8年間。東京の有名大学に進学したZ世代の若者の学生時代から社会人となる姿を通してその本音をリアルに描いた小説。明確なゴールのない時代にどうすれば幸せになれるのか分からず、迷走する若者の姿が赤裸々に描かれている。麻布さんは平成22年、慶應義塾大学への進学を機に上京し、4年後都内の企業に就職。平成の競争社会を生き抜いてきた。麻布さんたちの世代にとって成功の証しはタワーマンションでの暮らし。しかし、その価値観は1つ下の世代の令和の若者たちと違うことに気が付いた。ペンネームの由来は東京の人は人生を自分の描いたとおりに生きているようで実は同じルートをみんなでぐるぐる走らされている競走馬のようだというところからきている。さまざまな年代や職業の人と交流したいと365日、ほぼ毎日のように飲み歩いている。麻布さんが小説を書き始めたのは飲み会も難しかったコロナ禍の令和3年。SNSに短いストーリーを次々に投稿したのがきっかけ。都心のタワマンで暮らす人たちの格差や嫉妬を描いて話題を呼び、2年前、1冊の本にまとめ出版された。長時間労働による過労死の問題やコロナ禍など平成の終わりから令和にかけて働き方や生活は大きく変わった。小説の中ではそんな時代に有名大学に進学。就職活動を勝ち抜いて憧れの企業に入った主人公がある同期の発言に衝撃を受ける。急速に広がる仕事だけが人生ではないという価値観にうなずく一方で、時代ごとに変わる正しさに戸惑う若者たち。麻布さんは、家族や友人にも作家であることを明かしていないということでそれによってさまざまな人たちから自然と話しかけてもらうことができ、リアルな描写に生きていると話していた。選考会はきょう夕方に始まる。