児島功さんは大手ゼネコンに長年勤務していたが、社内の起業制度を利用して今年4月に会社を立ち上げた。児島さんは抜本的に避難所の環境を変えるのが目標だと話す。20年近く国内外の建設現場に携わった児島さんがモデルにしているのが、避難所の先進地とされるイタリア。日本との最大の違いは避難所の担い手で、イタリアでは国主導で各地の倉庫から物資が一斉に届けられ避難所が立ち上がる。運搬・設営は訓練を積んだボランティアで、実費は国が負担する。個室のベッドやバリアフリーのトイレ、キッチンカー、食堂が48時間以内に設置され日常生活に近い環境が整備される。児島さんが避難所のしくみを変えたいとの思いを強くしたのが能登半島地震だった。日本では避難所は被災した自治体が整備することになっており、物資が届くまでにかかった時間を調べたところ段ボールベッドは2週間後、トレーラー式のトイレは1ヶ月後だった。国が手動するイタリアと比べ大きく遅れをとっている。こうした資機材全てを民間の力で48時間以内に整備したいと考えている。児島さんが力を入れているのが民間のネットワーク作りで、この日は自動車業界団体に資機材の運搬を依頼、自治体と契約を結ぶなどして収益を確保するビジネスモデルを説明し民間の力で被災地の負担を減らしたいと訴えた。自治体との連携も始まっている。この日訪れたのは佐賀県で廃校になった小学校で、県の協力で秋に避難所の設営訓練を計画している。少子化で全国に増える廃校には整地された広大なグラウンドがあるため避難所として活用できると考えた。訓練ではグラウンドに資機材を持ち込み50人分のテントなどを設営する予定で、広さや地面の硬さを確かめた。訓練には他の自治体も招いて民間との連携の強みをPRする狙い。小島さんは全国に新たな避難所の形を広げたいと思い描いている。