解説委員・佐藤庸介の解説。もともと農水省は放出の目的について、直接価格を下げるというよりも流通の目詰まりを解消するというふうに説明。「流通の目詰まり」について解説。業界関係者の間では、そもそも農水省がいう程コメがとれていないのではないかという指摘が多く聞かれる。疑念の背景には、収穫量があくまでサンプル調査ではじき出された数字だということがある。一方で当初、政府が強調していたように投機的に抱えている業者が多いわけではないという声もある。調達が心配な生産者、集荷業者、卸売業者などがそれぞれ少しずつ在庫を多めに持ったため、出回るコメが少なくなったのではないかという見方。価格を下げると期待されている備蓄米だが、多少、安く販売されたとしてもトータルの量は年間需要量に直すと半月分にもならない。安いということで人気になればすぐになくなってしまう。そこで、江藤農林水産大臣は政策効果が得られないと判断した場合は、追加の放出も当然検討すると述べている。しかし、今回の放出後に残る備蓄米およそ70万トンあるが、そのうち市場の評価が高い去年産は3万トン、おととし産は12万トンまで減少。農水省がねらっているように備蓄米の放出で流通の目詰まりが解消しなかったとしたら、結局、不足感は続いて値上がりに歯止めがかからない可能性も否定できない。ずっと備蓄米を放出しなかったことや、新米が出たら価格が落ち着くと言っていたがそうならなかったことで、消費者は農政に強い不信感を持っている。農水省やコメ流通関係者は、自分たちの想定が実態と違った場合でも自説にこだわらずに現実を認めて、とにかく混乱の収束に全力であたってほしいと思う。