厚生労働省が今月公表した財政検証。公的年金がこの先100年維持できるか財政状況を5年に1度チェックするもので年金の定期健康診断とも言われる。今回の検証の前提は実質経済成長率が+1.6%~-0.7%までの4つのケースを想定している。2070年時点の合計特殊出生率が1.36などとした時に40年間平均的な賃金で働いた会社員の夫、専業主婦の妻のモデル世帯が受け取る年金額を試算した。2057年度の給付水準はモデル世帯の年金額で21万1000円。所得代替率50.4%とした。日本総研特任研究員・高橋俊之は「今回の結果は手堅く見積もった。高齢者や女性の就労促進で厚生年金期間が増え底上げに効いたことと近年の積立金の運用の成果が好調」、明治大学教授・田中秀明は「出生率の見積もりは極めて楽観的。厳しい前提での代替率をも守れることを示さなければ。皮算用と言わざるを得ない」、金融・経済アナリスト・横川楓は「共働き、女性が働くことが当たり前ということがある。年金が将来、きちんともらえるのかと思っている若い世代が多いのは事実」、働きかた研究所代表・平田未緒は「前回より改善している理由として厚生年金の被保険者数が増えたことが明確になった。これはよかった。半面、労働参加の増加は今後、頭打ちになる可能性があり期待できない」、慶應義塾大学教授・駒村康平は「出生率が足元弱含みになっている。新たにくる外国人に依存する部分もあり下振れ要素はある。長期的な視点で議論をしていく必要がある」。明治大学教授・田中秀明は「今の年金制度は非常に複雑で多くの国民は理解することが難しい。事実を国民に伝えることが議論の第一歩になる」。