2024年7月21日放送 9:00 - 10:00 NHK総合

日曜討論
どうなる?私たちの「年金」

出演者
牛田茉友 曽我英弘 
(オープニング)
オープニング

テーマは「年金」。今月、政府は年金財政の最新の検証結果を示した。制度改正に向けた議論が本格化する。

(日曜討論)
「財政検証」受け止めは

厚生労働省が今月公表した財政検証。公的年金がこの先100年維持できるか財政状況を5年に1度チェックするもので年金の定期健康診断とも言われる。今回の検証の前提は実質経済成長率が+1.6%~-0.7%までの4つのケースを想定している。2070年時点の合計特殊出生率が1.36などとした時に40年間平均的な賃金で働いた会社員の夫、専業主婦の妻のモデル世帯が受け取る年金額を試算した。2057年度の給付水準はモデル世帯の年金額で21万1000円。所得代替率50.4%とした。日本総研特任研究員・高橋俊之は「今回の結果は手堅く見積もった。高齢者や女性の就労促進で厚生年金期間が増え底上げに効いたことと近年の積立金の運用の成果が好調」、明治大学教授・田中秀明は「出生率の見積もりは極めて楽観的。厳しい前提での代替率をも守れることを示さなければ。皮算用と言わざるを得ない」、金融・経済アナリスト・横川楓は「共働き、女性が働くことが当たり前ということがある。年金が将来、きちんともらえるのかと思っている若い世代が多いのは事実」、働きかた研究所代表・平田未緒は「前回より改善している理由として厚生年金の被保険者数が増えたことが明確になった。これはよかった。半面、労働参加の増加は今後、頭打ちになる可能性があり期待できない」、慶應義塾大学教授・駒村康平は「出生率が足元弱含みになっている。新たにくる外国人に依存する部分もあり下振れ要素はある。長期的な視点で議論をしていく必要がある」。明治大学教授・田中秀明は「今の年金制度は非常に複雑で多くの国民は理解することが難しい。事実を国民に伝えることが議論の第一歩になる」。

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「基礎年金」水準低下は  

年金制度の課題の1つが基礎年金の給付水準の低下。基礎年金の2024年度の給付水準は、夫婦満額で月13万4000円。今回の財政検証では、2057年度は10万7000円になると試算された。駒村氏は「現役世代の生活レベルに対し相対的なもの。マクロ経済スライドによって代替率は下がっていく。今後、基礎年金だけの人は減っていく。適用拡大で厚生年金に入る人も増える。ただ基礎年金は障害年金も、遺族年金も道連れに下がる。生活保護を受ける人も増えるなど問題も起きてくる」などと述べた。平田氏は「基礎年金の水準低下を防ぐことは年金改革の焦点」などと述べた。横川氏は「モデルケースは夫婦だが単身も増えている。金額が減っていかないような仕組みを整える必要がある」などと述べた。田中氏は「日本の年金は国民年金と厚生年金。今後、カットされ高齢者の貧困が増える」などと述べた。高橋氏は「重要なのは厚生年金に入った人の1階と2階のバランスが崩れること。マクロ経済スライドで調整するが調整の仕方を別で計算するので調整期間の一致の検討が必要」などと述べた。

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基礎年金の給付水準底上げについて。厚生労働省は国民年金保険料の納付期間を現行40年から45年へ延長することを検討。しかし、財政検証の結果を受けて武見厚生労働相は延長見送りを表明した。駒村氏は「長期的にはやらなければならない改革。加入者を増やすだけでは力不足でマクロ経済スライドの期間を短くしなければならない」などと述べた。平田氏は「マクロ経済スライドの調整期間の一致はなすべき」などと述べた。高橋氏は「厚生年金の中でどう仕分けするか考えるとすっきりする」などと述べた。田中氏は「国民全員が能力に応じて負担し再分配することであればいいが、必ずしもそうなっていない。平均寿命は伸びているので国民年金加入者にとってはほとんど年金は増えない」などと述べた。

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「厚生年金」適用拡大は 

厚生年金の適用拡大について。加入者を増やすことでより多くの年金を受け取れる人が増える。加入要件の紹介した。企業規模要件を撤廃し従業員5人以上の個人事業所のうちフルタイムでも非適用業種を対象にした場合、新規加入は約90万人になる。金融経済アナリスト・横川楓は「社会保険の適用拡大で健康保険のメリットもある」、明治大学教授・田中秀明は「適用拡大は問題がある。さらに不公平が拡大する。なぜ年収で判断しないのか」。日本総研・高橋俊之 は「適用拡大には2つ目的がある。1つは低年金を防ぐため、もう一つは社会保険が働き方を歪めてしまっている」。働き方研究所・平田未緒は「企業規模要件の撤廃はしていいと思う。国民年金には職業により3つの種別に分かれている(第1号、第2号、第3号)。第3号は会社員の配偶者などでこの扱いが議論いなっている。3号について。明治大学・田中秀明は「3号制度は働くことにブレーキをかけている。昔は意味があったかもしれないが、今は機能していない」。フリーランスの方への対応について。働き方研究所・平田未緒は「フリーランスにはいろんな方がいて一緒くたに論じるのは難しい。基礎年金で支えられることが大事」。

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「人生100年時代」年金は

人生100年時代とも言われる中で、これからの年金制度や生活設計について考える。65歳からの平均余命は、男性約約19年・女性約24年。こうした中、一部で課題と指摘されているのが現在の在職老齢年金制度。65歳以上で働いている人の場合、給与と厚生年金の月額合計が50万円を超えると、年金の一部または全てが支給停止される仕組み。この制度をめぐり、高齢者の働く意欲を削ぐことに繋がるとして撤廃を求める一方、高所得者の高齢者優遇になると慎重な意見もある。高橋さんは、在職老齢年金が導入されたのは平成12年。少子高齢化が進み財政年金が厳しいということで、年金財政を健全化に貢献してもらうという狙いがあった。当時は定年が60歳が普通だったが、現在は65歳過ぎても現役と同じような働き方をする人が増えてきたので、現在となってみると就労意欲を損ねる課題があるとした。

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令和4年簡易生命表在職老齢年金

田中さんは、年金がカットされるのは給与所得者だけで、自営業者や株で儲けても年金はカットされない不公平な制度だという。今回の財政検証で示された在職老齢年金を廃止した場合、年金給付学が減るという。マクロ経済スライドが働き年金給付が削られると矛盾が大きい制度と指摘。問題は、高所得者の人も年金で調整すること。世界にはこういう制度はなく、高所得者も高齢者も働いてもらい税金を通じて国に貢献してもらえば良いという。今の在職老齢年金は、働かないようにしてほしいということを言っているという。横川さんは、同世代を見ていても高齢になってもお金のやりくりのために働きたいという方が増えていると感じており、就労意欲を削いでしまうのはあるとし、何かしらの調整が必要などと述べた。駒村さんは、高齢者の健康状態がかなり良くなってきていて、人手不足社会であり、個人にとってもマクロ経済スライドで年金給付が下がると考えるとより長く働きたいという意欲が高まるという。一方で今回の財政検証の中でも、65歳以上の労働力率を2040年には70まで上げないと持たなくなることもあるので、障害になってる在職老齢年金については段階的に廃止に向けて進める必要があるという。高所得者優遇の話は税で調整すればいい話で年金で調整すべきではないとした。平田さんは、賃金・年金だけでみれば、合わせて50万円は相当程度稼いでいる人とも見れると指摘。一方で年金制度だけでみるのは限界があるので、税金や資産に踏み込まないと本当の公平性にはならないとした。高橋さんは見直しについて、在職老齢年金の支給停止撤廃なり、限度額を引き上げることをやるべきだという。今回の財政検証でマクロ経済スライドが進むのを防ぐための方策として、標準報酬月額の限度額を引き上げることなどをセットで行うことが大事などとした。

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在職老齢年金
公的年金の役割は

公的年金の役割について。横川さんは、若い方は老後のことは全く想像ついてない方が殆どで、公的年金シミュレーターを使って年金額を試算することと、社会の現状を考えると自分で備えていく必要があると考えている。平田さんは、個人での備えが必要だとし、ただ備えようにも備えられない人に目を向ける必要があると指摘。田中さんは、基礎年金を導入している国の例をみれば、最低限は税金で国民全体を支え、それ以上は自助努力を求めるというバランスが重要などとした。だが今の年金制度や保険制度はそれを阻害している制度があるので、これを撤廃することが大事だと考えている。駒村さんは、年金は徐々に下がるが今後も老後の所得の中核になるとし、政府は情報を提供し国民の理解を得てやるべき時にやるべき政策を進める姿勢が年金制度に対する安心感を高めるとした。真っ先に手を付けるべき課題は、適用拡大。基礎年金のマクロ経済スライドを早めに止めるためには、利害対立が置きないように進める必要があるとした。高橋さんは、最低賃金をしっかり上げていくことと、公的年金の改正をしてしっかりした水準を確保することが大事だとした。制度改正のポイントは、調整機関の一致をどうするかなどいろんな課題があるので一つ一つ議論をやってくことが大事だとした。

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