医療の質の低下を訴える声は都市部からもあがっていた。総合病院の元看護師の女性は、看護師としてのプライドにふたをして流れてくる患者に対応していたと語った。女性は、1人でも多くの患者を集めようとする病院の方針に問題があると指摘。医師が対応できる患者の数を超えて受け入れることで、長時間待たされる患者も少なくなかったという。その病院に母親が脳梗塞で入院していたという女性にも話を聞いた。当初は食事も会話もできていたが、3日後には話すこともままならなくなり、医師に説明を求めても忙しいと会ってもらえなかった。不信感が募り別の病院に転院したところ、新型コロナに感染し誤嚥性肺炎も起こしていると告げられた。取材で入手した病院の内部資料では、とにかく収益を重視するという方針が示されていた。手術を倍増させるという計画を示し、診療科ごとに目標件数を課していた。病院関係者は、この20年大きく増えるのなかった診療報酬が背景にあると指摘。物価や人件費の高騰の影響は都市部の大規模病院ほど大きく、赤字は全国平均の1.6倍になっている。全日本病院協会の猪口会長は、ここ数年いきなり物価や人件費が上がり私の知っている限り黒字の病院はない、住民も減っているのに多くの科を残して運営しようとしてもできない、他の病院との連携でどういう医療をやっていくかと考えざるをえないと話した。