大分・別府市の鉄輪温泉は古くから湯治場として栄えてきた。街は源泉かけ流しの温泉で溢れている。菅野静さんは4年前に大阪から移住し、3軒のシェアハウスを経営している。住民は食事をともにしたり掃除を分担したりして過ごしている。シェアハウスにつけた名前は、湯治ぐらし。鉄輪温泉では貸し間などの湯治の文化が育まれてきた。住人の田中健太郎さんはシェアハウスに入って4か月。リモートワークをし、合間に温泉でリフレッシュしている。シェアハウスの住人の健やかな生活が菅野さんの願い。しかし、菅野さんは移住前は不摂生な生活を送っていた。広告代理店に15年間勤務し、海外赴任の間、帰国の度に温泉巡りすることにのめり込み、東北の湯治場でおばあさんが「自分のために作るのがご飯でしょ」と言われ、鉄輪温泉を訪れたときに陶磁文化に触れた。中でも昭和15年創業の老舗旅館に心を惹かれた。宿の真ん中に地獄釜があり、そこで湯治のお客さんが自炊する。菅野さんは湯治の力と可能性を信じている。