仙台市郊外にオープンしたカフェはテラス席で開放的な気分を感じながら淹れたてのコーヒーやホットサンドを楽しむことができる。スタッフとして働くのは医療的ケアが必要な家族がいる母親やきょうだいたち。カフェを開いたのは隣接する福祉施設を運営する社会福祉法人。医療的ケアが必要な人が利用するこの施設。カフェを開いたきっかけは働きたくても働けないという利用者の家族の声だった。医療的ケアが必要な子がいる親は体調の急変などに備え子どもを施設に預けている間も仕事に出るのが難しいという。実際、4年前に国が行った調査では医療的ケアが必要な人の家族の約2人に1人が「社会から孤立していると感じる」と答えている。また日々の生活で行いたいこととして9割近くが「希望する形態で仕事につきたい」と回答している。そこで社会福祉法人では施設の隣にカフェを建設し、スタッフとして働くことを提案。建設費の一部はクラウドファンディングで賄った。カフェで働くスタッフの1人、高橋邦子さんは働くのは実に30年ぶりだという。高橋さんは「楽しい。新しいことを覚えるのも楽しい。決められた時間に外で働くのは難しいと思って諦めていたので、施設と同じ場所なのはありがたい。」と話す。高橋さんの息子の幸太郎さんは生まれつき脳性まひがあり、自分で体を動かしたり会話をしたりできない。施設には週4日通っている。夫と息子と3人暮らしの高橋さんは夫が会社につとめている間、自宅での息子の世話は主に高橋さんが担っている。たんの吸引や食事の手伝い、薬の吸入などと家事と両立する毎日。いつ体調が急変するか気を抜けない。スタッフの一員としてカフェで働き始めた高橋さんは施設がそばにあるため安心して働けるという。これから社会との接点ができることを楽しみにしている。カフェを運営する社会福祉法人は子どもの体調の急変で家族が仕事に入れなくなった場合に備え、施設のスタッフがバックアップできる体制を整えているという。法人では母親たちの働き方を分析し、働きやすい時間帯や早退率をデータ化して企業に提供することで、医療的ケアが必要な人の家族の実態を理解してもらい、働きの場の選択肢を増やしていきたいとしている。