年収の壁の1つで年収106万円以上になると配偶者の扶養を外れて自分で年金保険料を負担しなければならず、その分、手取りが減ってしまうので労働時間を抑える働き控えをする人もいる「年収106万円の壁」について、これを撤廃する案を厚生労働省がきょう審議会の部会に示して了承された。きょう開かれた社会保障審議会の部会で厚生労働省は厚生年金に加入する要件のうち、年収106万円の壁を撤廃する案を示し了承された。撤廃されれば賃金の額にかかわらず週に20時間以上働くと厚生年金に加入し保険料を支払う必要が出てくる。厚生労働省は新たに加入する人の保険料負担が重くなりすぎないようにする方針だ。労使折半となっている保険料について年収換算で156万円に届かないうちは企業側がより多く負担できる仕組みを導入するとしている。こうした制度見直しの背景の1つに指摘されているのが人手不足。最低賃金が上昇する中、パートの人などが年収の壁を超えないようさらに働く時間を抑えがちとなり人手不足が一層、深刻さを増すことが懸念されている。首都圏や関西でおよそ300の店舗を展開するスーパーマーケットの川崎・高津区の支店で働く50代の従業員の場合、人手不足の中、もどかしさを感じながらも働き控えをして年収を106万円以内に抑えていた。このスーパーでは現在、それぞれの店舗で従業員が10人から20人ほど足りていない状況。さらに106万円の壁が撤廃されても週20時間以上という労働時間の要件は残されるため、これが新たな壁となって必要な人材を確保できないのではないかと指摘する声もある。美容関連の商品を販売する別の会社の場合、パート従業員10人を対象にことし9月、働き方の見直しを行った。その結果、半数以上の6人は配偶者の扶養に入ったまま働きたいと就業時間を週20時間未満に調整した。106万円の壁の撤廃時期は2年後の2026年10月を想定している。厚生労働省は与党などとの協議を経てできるだけ早期に年金制度の改正案をまとめ来年の通常国会に必要な法案を提出したい考えだ。多くの働く人が納得できて人手不足の解消につながるのかが注目されている。