去年9月、撮影初日を迎えた。新作「こんにちは、母さん」は東京の下町を舞台に人生を生き直そうとする人々を描く物語。山田監督は母が恋をしている現実を受け止められない息子が布団でもがく場面で、かけてあったコートが落ちるタイミングにこだわった。山田監督は人間を描くこと、観客が共感し、身につまされることを大事にしている。妥協は一切しない。初日に撮影した場面は撮り直すことに決めた。いい映画を観客に届けたいという情熱のほか、“山田組”と呼ばれるスタッフたちも山田監督を支えている。スタッフは全員フリー。山田監督は自身が若い頃は全員社員だったことを話し、日本映画界の現状を憂いた。山田監督が是枝裕和監督に「日本映画はだんだん暗くなっている」などと話すと、是枝監督は「(自身の作品は)暗い題材が多いから反省します。見終わって生きてるの嫌になっちゃうなっていうのは作らないように決めている」などと答えた。