6月、1人の抑留当事者がイタリアから来日した。ダーチャ・マライーニさんは日本で抑留の事実が知られていないことに危機感を感じ自身の体験を語る決意をした。8歳まで抑留され、帰国後イタリアを代表する作家となった。出発した自伝には日本での抑留経験が綴られている。ダーチャさんは2歳のときに日本文化を研究する父に連れられて来日したが、日本と同盟関係にあったイタリアが連合国軍に降伏し、ダーチャさんたちは抑留された。ダーチャさんはかつて抑留されていた場所を訪れた。ここに抑留されたイタリア人は16人、配給を奪われて追いつめられたこともあったという。抑留所の痕跡は何も残っていなかった。1945年5月、空襲を逃れるために抑留所として使われることになった山あいの寺が残っている。ここではダーチャさんたちは監視の目を盗んで日本人と顔を合わせてやりとりをすることがあった。この寺に住んでいた加納啓子さん。啓子さんたちは食べ物を渡すなどダーチャさんたちを支えた。敵国人ではなく人間として向き合ってくれた人たちとの出会いもあり、ダーチャさんは切羽詰まったときでも自分と異なるものを尊重することの大切さを噛み締めている。