戦後80年となる今年私たちは「いまを、戦前にさせない」をテーマに、さまざまな特集を伝えている。9年前、広島を訪れたアメリカのオバマ大統領と抱き合った被爆者の男性がいる。50年近くにわたって原爆で亡くなったアメリカ兵らの存在を調べ明らかにしてきた。広島市内のビルの1階に建てられた慰霊碑。アメリカ国旗が添えられ英語で追悼の言葉が書かれている。建てたのは被爆者の森重昭さん。まさに、この場所で亡くなったアメリカ兵らを追悼するため自費で慰霊碑を作った。森さんが生涯をかけて取り組んだのが広島で被爆死したアメリカ兵の調査。12人いたことを突き止めた。森さんは8歳の時に爆心地から2.5kmの場所で被爆。戦後30年経ったころ当時のことを調べる中で出会ったのが被爆者が描いた絵。原爆が投下され焼け野原となった広島の街を憲兵に連れられて歩くアメリカ兵が描かれていた。捕虜として連行された広島市内で母国が落とした原爆によって次々に命を落とした。しかし、アメリカ政府は原爆で亡くなったことを遺族に伝えておらず、森さんは真実を伝えたいと遺族を捜す活動を始めた。当時、アメリカ兵を目撃した一人ひとりに会いに行き情報を集めていた。森さんは名前だけを頼りにアメリカ各地に国際電話をかけていた。夫婦二人三脚で続けてきた終わりの見えない遺族捜し。また、同じ被爆者から厳しい言葉をかけられたこともあったという。アメリカ兵12人全員の遺族を特定した森さん。2018年には国連本部に招かれ30か国以上の外交官らを前に「私がやったことは間違いではなかった」と語った。森さんは去年、腸の病気で入退院を繰り返し体力が低下。それでも今は長崎で被爆死した8人のイギリス兵とオランダ兵の調査をしていて、そのうち6人の遺族を特定した。
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