幕内で最も多い決まり手が「寄り切り」。相手に体を密着させ、土俵の外に出す技。生涯の取り組み数に対して寄り切りで勝った割合が多い力士を調べると、歴代3位は千代の富士(寄り切りの白星数:33.6%)。その特徴は相手の前みつ(前まわし)を掴み一気に前に出る速攻相撲。このスタイルが生まれたのはある理由から。若い頃は派手な投げ技が多く方の脱臼を繰り返していた。体への負担が少ない寄り切りを増やすため、それまで一度も勝てていなかった琴風と稽古を繰り返した。寄り切りを磨き上げたことで大横綱への道が切り開かれた。その千代の富士が引退するきっかけとなったのが寄り切りでの敗北だった。その相手が貴花田(後の横綱・貴乃花)。取り組み数のうち寄り切りでの勝利は40.6%と歴代1位。貴乃花の寄り切りは技術が満載。前みつを取って動きを止め、胴回しを掴むと回しを切る。寄って出ると最後は腰を落として完璧な仕留め方。寄り切りの名士としては北の湖も忘れてはならない。寄り切りで勝った割合は歴代2位。無敵と言われた右上手からの寄りを生んだのはライバル・輪島の存在だった。輪島の左下手投げに何度も屈し、苦杯をなめてきた。打倒・輪島に向け右上手からの寄り切りをひたすら磨いた。そして迎えた歴史的一番。千秋楽の結びでの横綱同士の相星決戦。右上手が得意の北の湖と左下てが得意の輪島がともに狙った組手に持ち込む。追求し続けてきた右上手からの寄り切り。「輪湖」と呼ばれる時代を築いた。北の湖が輪島からあげた22勝のうち18勝が寄り切りによるものだった。
