大麻が事実上、解禁されているタイ。娯楽目的での使用が横行し、政府は再び規制しようとしているが反発も起きている。タイの首都近郊にある工場で栽培されている植物は約5000株もの大麻草。日光とLEDの照明を組み合わせた栽培で、3週間おきに150kgの大麻を生産していて、主にてんかんなどの治療に使われている。大麻の生産企業の担当者は「人々がもっと大麻を利用し、医療特性を広く活用できるようにすべきと信じている」と話す。タイでは2019年に医療目的での大麻使用が合法化。2022年には大麻が麻薬リストから外れて、個人の栽培も認められるようになり国内市場は大きく拡大した。この会社では今後、大麻草の医薬品としての利用が解禁される日本などにも目を向けている。生産された医療用大麻は、街中の医療機関や国内に7000店舗以上ある大麻ショップなどに卸される。しかし大麻をめぐりタイの社会は揺れている。観光客による娯楽目的での使用が横行している。日本人も多く住んでいるタイ・バンコクのプロポンというエリアにも大麻ショップがある。取材中にも大麻を購入する観光客の姿が、日本人の客もいた。大麻の事実上の解禁で薬物依存症の患者が4倍近く増えたとの報告もあり、乱用を問題視する声も高まっている。こうした批判を受け、タイ政府は今年5月大麻を再び規制する方針を発表。大麻ショップのオーナーは「もし規制が変わったら(対磨吸引用の)個室を診察室に改装するかもしれない」と明かした。1つの案として浮上しているのが、医師を常駐させるクリニックのような営業形態。オーナーは「事業者の多くが“どうなるのか分からない”という不安に直面している」と語った。タイ政府が大麻の規制緩和に当たって具体的な法律や依存症対策を整備せずに経済効果ばかりを優先させた点は否めず、後手に回る政府の対応に事業者からの反発も強まっている。