大阪市生野区にある中村建設。依頼人は、社長の中村さんだ。19歳で起業し、東京などにも事業所を展開している。国内の被災地支援や、カンボジアの貧困地域への支援なども行っている。中村さんのお宝は、中村彝の油絵だ。妻が祖父の形見として受け継いだという。中村彝は、1887年に茨城県水戸市に生まれ、17歳で結核を患い、陸軍中央幼年学校を退学すると、太平洋画会研究所に入所した。レンブラントをはじめ、ルノワールやセザンヌの影響を受けた。第4回文展では、「海辺の村」で三等賞を受賞した。中村屋を営んでいた相馬愛蔵・黒光の援助を受け、制作に没頭したが、相馬家の長女・俊子との結婚を反対され、中村屋を去った。その後完成させた「エロシェンコ氏の像」は、第2回帝展で、油絵による肖像画の最高傑作とされた。37歳で亡くなった。依頼品は、「湖畔」というタイトルで、帆掛け船や洋風の建物などが描かれている。