試作4号機を作り上げてから2年、渡辺の元にJAXAから連絡が届く。月面探査ミッションへの参加依頼だった。その内容は小型月着陸実証機SLIMに乗せる小型ロボットの開発。月に到達後、放出され月面を自力で走行し、撮影した画像を地球に送るというミッション。SLIMに乗せるにはロボットのサイズを300g以下、直結8センチ以下と試作4号機よりさらに小さくしなければならなかった。大きな課題を前に渡辺はタカラトミーの技術者・米田陽亮を頼った。渡辺にとって米田は画期的なおもちゃを共に開発してきた信頼できる仲間だった。開発の第一の課題は月面の走行。さらに、月面で撮影や走行をロボット自身が判断して行う頭脳をどうするか。渡辺が声をかけたのはソニー。目的はSPRESENSEという小型ボードコンピューター。多機能で計算能力が高く消費電力が少ないためロボットの頭脳になると思った。課題をになったのは永田政晴。永田は宇宙好きな社内のエンジニアを集めた。未知なる宇宙での一発本番、地球で試せることはすべて試した。民間技術者たちの強い覚悟にSORA-Q開発責任者の平野大地は驚いていた。米田たちはおもちゃ技術を活かした新たな変形の仕掛けを次々と提案。JAXAと民間企業、それぞれの視点、得意分野を活かし開発は進んだ。残る難題は月の斜面をどう登らせるか。渡辺はウミガメの動きをヒントにタイヤの回転軸をずらして両輪を動かすことを思いついた。完成したのは直結7.8センチ、重量228g、世界最小・最軽量の変形型月面ロボット。自律制御機能搭載、トランスフォーム機能も備えた。ロボットの相性はSORA-Q。
住所: 東京都調布市深大寺東町7-44-1
URL: http://www.jaxa.jp/
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