- 出演者
- 寺門亜衣子 鈴木拓(ドランクドラゴン) 川村エミコ(たんぽぽ)
自然災害が多発する日本。防災・減災の備えが重要。その研究に取り組むのが防災科学技術研究所。研究開発の最前線をたんぽぽ・川村エミコが取材。私たちの暮らしに研究がどう役立っているのか紹介。
防災科研の最新研究が私たちの生活にどう役立っているのかを見ていく。防災科研は1963年に国立の研究機関として発足。実験や災害時の実証を重ねて効果を検証することで行政機関へ防災技術を提供し、実際の生活に役立つ技術になることを目指して取り組んでいる。防災科研では様々な研究を行っているが、今回は大雨・社会防災を見ていく。
災害級の雨を再現して降らすことができる世界最大規模の実験施設へ。民間企業との共同実験などに使われている。天井の2176個のノズルから水を噴射する。施設では実際の大雨に近い大粒の雨を再現するための改良が加えられ、よりリアルな実験ができるよう進化した。住宅メーカーとの共同実験では本物の家を建て大雨による浸水被害の原因を解明。水害に耐えられる住宅の開発に繋がった。自動運転技術を開発する企業は人や障害物を見分けるセンサーが大雨の中でも正確に作動するのか検証実験を続けている。さらに強風装置も導入。ドローンメーカーが強風を伴う大雨にも耐えられる機種作りに役立てている。悪天候でも救援物資を届けるため。メーカーとの共同実験に加え、防災科研では年2回施設を一般開放。大雨を体験してもらう取り組みにも力を入れている。川村も1時間に100mmの雨を体験させてもらうことに。この猛烈な雨は東京都心でも年数回発生しているという。わずか5分で足元には水たまりが発生。さらに音が聞こえづらい。試しに15m離れたところにスタッフを立たせ大声で呼びかける。12mの距離で声が届いた。続いて1時間に300mmの豪雨を体験。20m先の小屋が霞むほどの視界の悪さ。再び声が届く距離を測る。3.5mまで近づかないと聞こえないという結果に。雨水が地面に染み込まない舗装路が多い都市部だと1時間に50mm以上で冠水などの恐れがある。特に夜間は足元が見えづらく、転倒して流されてしまったり、蓋が開いたマンホールや側溝に転落して流されるような危険もある。車での避難にも注意が必要。大雨時のアンダーパスは迂回を。乗用車には万が一の場合に備えて緊急脱出用ハンマーを常備しておくと良い。
線状降水帯は積乱雲が同じような場所で次々と発生し上空の風の影響で線状に連なることで地上には線状に雨の領域が多いところができる。台風を除くと集中豪雨の6割以上が線状降水帯によって引き起こされている。線状降水帯の予測精度の向上が課題になっている。
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水蒸気の量を観測することで線状降水帯の予測がより正確になる。マイクロ波放射計を紹介した。水蒸気はマイクロ波というかすかな電磁波を出しているため、これを受信することで空気中の水蒸気量を測ることができる。現在、天気予報には数値予報が使われている。清水さんは数値予報にリアルタイムの水蒸気量を組み合わせる方法を考案した。マイクロ波放射計は気象庁が採用し全国17箇所で稼働中。気象庁降水短時間予報のサイトでは30分先の線状降水帯予測を公開している。
気象庁は高解像度の水中予測と水蒸気のデータを組み合わせる予測法を取り入れている。ただ、水蒸気観測ができるマイクロ波放射計は西日本を中心に17台と少ない。今後、水蒸気の観測エリアがさらに広がることが必要。Q.水蒸気観測に使う”あるもの”とは?正解:地デジ放送波。情報通信研究機構と民間企業の共同研究で開発されている仕組み。地デジ放送波を含めて電波は大気中に水蒸気があると伝わり方が少し遅れる。水蒸気量が多ければ多いほど大きく遅れる。わずかな遅れを測ることができる受信機を置くことで水蒸気量を観測するという仕組みになっている。最大のメリットはテレビ塔(送信機)がすでに全国にある。民間企業の参入でより広範囲に。気象庁は今年から観測船などによる海の水蒸気観測を強化。日本は海に囲まれているため、風上側は海になることが多い。より早く発生を予測するためには風上側の水蒸気を知る必要がある。半日先の予測精度も上がる可能性があると期待されている。
1995年1月の阪神・淡路大震災。震度7の揺れを記録した。犠牲者は6434人。住宅被害は約64万棟。この地震をきっかけに災害時の都道府県を超えた消防や医療などの支援体制、建物の耐震基準など様々な分野で制度の見直しが行われた。また、地震発生から1年間で約137万人のボランティアが活動。災害ボランティアの重要性が広く認識された。
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防災科研の社会防災は個人の防災意識や自治体の対応能力を高めて災害に強い社会を目指すことを指す。災害対応の現場には国・県・自治体・消防・自衛隊など様々な機関が入って活動する。ところが各機関は対応システムが違い共有が困難に。この問題を受けて防災科研では2014年から情報パイプラインとなるような情報共有の技術開発に着手した。これにより災害時に活動する組織が道路寸断情報などを互いに共有できるように。公的機関だけでは防災は成り立たず、情報共有を民間企業などにも広げていくことが必要だと考えている。
つくば市で地震が発生したと想定し実験を開始した。まずJAXAや民間の衛星がどこを飛んでいるか把握し最も早く被災地の撮影ができそうな衛星を割り出す。衛星画像は被害の概要を広域で把握できるのが強み。画像は情報パイプラインを通じて即座に共有される。画像を見てドローン会社が道路の寸断箇所に急行する。詳細な状況を撮影する。ドローン会社は画像を現場から情報パイプラインに送る。防災科研はそれぞれの画像を位置情報を元に合成する。情報パイプラインに集められたデータを1つにまとめることでスーパー地図が完成した。情報共有を場所から人へ焦点を定めようという動きが進んでいる。
能登半島地震では死者656人のうち428人が災害関連死だった。防災科研の呼びかけで被災者を支援する最新の技術を集めた交流会が開かれた。避難所への誘導をしてくれるアプリなど人への支援に焦点を当てている。マイナンバーカードを使った避難所の受付システムを紹介した。20秒ほどで登録が完了した。情報は自治体に共有することもできる。スマートウォッチは装着するだけで脈拍や皮膚温度などを自動で計測してくれる。情報は医療機関にも共有され、その場でオンライン診断を受けることも可能になる。