国が生活保護の支給額を段階的に引き下げたことについて、最高裁判所はきょう、違法だったとして引き下げを取り消す判決を言い渡した。厚生労働省が2013年から3年にわたり物価の下落を反映するなどとして生活保護の支給額を最大10%引き下げたことについて、”健康で文化的な最低限度の生活を守るという法律に違反している”として取り消しを求めていた。原告の千代盛学さんは、感無量だが国に言いたいのは今後こういう裁判がでないようにして欲しい、と述べた。この裁判、全国の高等裁判所で判決があった12件のうち、名古屋など7件は違法だとして取消しを認めた一方、大阪など5件は違法ではないといて退け、判断がわかれていた。きょうの判決で統一的な判断を示した最高裁判所。第3小法廷の宇賀克也裁判長は、”デフレ調整で物価の変動率だけを直接の指標にした厚生労働相の判断は、専門家による部会での検討を経たものではなく、専門的な知識と整合性を欠くところがある、その手続きは誤りで違法だった、として処分を取り消す判決を言い渡した。一方、国に賠償を求める訴えは退けた。原告側は減額分を遡り支給するよう求めていて、約200万人の当時の受給者への対応が焦点になる。原告らの要請は国に対して、判決を真摯に受け止め早期の全面解決に向けて努力すべきだとしている。福岡厚生労働相は、司法の最終的な判断が示されたことから判決内容を十分精査し適切に対応していく、とコメントを発表した。立命館大学の桜井啓太准教授は「歴史的に意義のある判決」「なぜこのようなゆがんだ基準設定が行われたのか当時の状況について検証を行うことも必要」などと指摘していた。