「冬の屋外で2時間以上、謝罪させられた」「歯を食いしばれと言われ、殴ろうとしてきた」などの客からの迷惑行為などのカスタマーハラスメント、いわゆるカスハラについての調査結果が発表された。今回の調査では、回答者のおよそ2人に1人が、2年以内にカスハラの被害に遭ったと答えている(UAゼンセンの調査)。企業や自治体も対応を進めている。街の人たちに聞いてみると、カスタマーハラスメントを受けたという声、多く聞かれた。きょう繊維や流通などの労働組合で作るUAゼンセンは、カスハラの調査結果をまとめた。UAゼンセン柳津部門・佐藤宏太執行委員は「カスハラ被害にあっている現場従業員が非常に多い」と述べた。調査はサービス業の組合員を対象に行い、3万3000人余りから回答があった。「2年以内にカスハラの被害に遭ったことがある」と回答した人は46.8%。約2人に1人だった。このうち心身の状態に変化があったか尋ねたところ、「嫌な思いや不快感が続く」などの回答があったほか、「心療内科などに行った」という回答もあった。佐藤執行委員は「従業員の被害状況、形態を十分に把握したうえで、従業員目線での対策が不可欠であると改めて浮き彫りになった」と述べた。カスハラ(カスタマーハラスメント)の被害をどう抑えるのか。大手通信会社は、東京大学とAI(人工知能)を使った対策の研究を進めている。コールセンターで働く人の心理的負担を減らそうというシステム。怒りの声を抑制するために、AIによって高い音に変換された。声を低くするなど、さまざまなパターンが。会社では、オペレーターが客の怒りを認識しつつ、怖さを感じない声を選べるようにしたいとしている。このシステムは、来年度中の事業化を目指している。大手通信会社プロジェクトの代表・中谷敏之さんは「コールセンターの離職率が高い。(職場環境が)全然改善されていない。つらい部分を無くしたくて。明るい現場にしたい」と語った。自治体の中にも、カスハラ(カスタマーハラスメント)の対策を行っているところがある。栃木・宇都宮市は、今月1日からすべての職員の名札を名字だけの表記に変えた。窓口で職員の対応に不満を持った市民などが、その場で名札を撮影して脅すケースなどが相次いでいたことを受けた取り組み。また徳島・徳島市では、ことし3月から職員の名札を名字だけにしたうえで、ひらがなとローマ字で表記する形にしている。一方、課長以上の管理職は、部署の責任者として対外的な対応が必要なため、引き続き氏名を表記した名札を使うことにしている。東京都は、全国初のカスハラ(カスタマーハラスメント)防止条例の制定に向けて検討を進めている。これまでに示された方針によると、カスハラを就業者に対する暴言や、正当な理由がない過度な要求などの不当な行為で、就業環境を害するものなどと定義。カスハラを行う対象として、客のほか、役所の窓口や学校などを利用する人も含まれるとし、罰則は設けないとしている。専門家は、防止に向けて、何がカスハラに当たるかを見える化することが重要だと指摘する。東洋大学・桐生正幸教授は「カスハラとは何か定義が必要。東京都の条例は様々なケースを浮き彫りにする意味で、カスハラの線引きをつけることができる」と述べた上で、「問題はあまりに過度なサービスをしすぎたゆえにカスハラが生まれたことを企業側も消費者側も自覚しなければいけない。新しい消費者教育、新しい消費者マインドも同時進行で進めていかなければいけない」と述べた。