米中貿易協議の焦点となるレアアースの輸出規制は、日本にも直接関係する問題。4月にアメリカが相互関税を発表したわずか2日後に、中国がレアアースの輸出規制を発表した。レアアースは自動車やスマートフォン、半導体、兵器などに使われ、輸出規制は世界的な混乱を引き起こしている。特に自動車メーカに影響が出ており、日本のスズキは主力の小型車の生産を一時停止、ヨーロッパも自動車部品工場が稼働を停止する事態となっている。レアアースのほとんどは中国で生産されており、精錬まで入れると全世界の91%が中国産(出典:フィナンシャル・タイムズ)。先週米中首脳電話会談が行われ、トランプ大統領は「レアアースをめぐる複雑な問題はもはや無くなるだろう」などと投稿した。仮に今回の協議で輸出規制が緩和されたとしても、中国が重要な鉱物の大部分を握っていることに変わりはない。2010年に尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した事件が起きた直後、中国から日本へのレアアースの輸出が滞った。事態は約2か月間続き、中国による経済的威圧の事例として注目された。その後日本は調達先の多角化を進め、廃棄製品からレアアースを取り出すリサイクル化につながった。2010年のレアアースの対中国依存度は約90%だったが、近年は約60%にまで下がっている。レアアースの問題は様々な課題を日本にも突きつけている。