11月には中村屋は2023年のクライマックスを飾る平成中村座の小倉城公演に臨む。舞台は中村屋とも縁が深い小倉で四年ぶりに熱烈なオファーをもらいやってきた。そして本番では、昼の部は義経千本桜 渡海屋・大物浦。10年前に人間国宝の片岡仁左衛門に教えてもらった演目。中村屋の二人は今回の舞台に並々ならぬ思いがあった。一年半前に小倉を襲ったのは旦過市場での火災。大正時代から続く旦過市場は二度に渡る大規模火災で87件の店舗が焼失した。長年愛されてきた映画館の昭和館も全焼した。勘九郎と七之助は、小倉の人々に恩返しがしたいとチャリティーイベントを企画。中村座を一回限りの映画館にしようという初めての試み。舞台上にスクリーンを設置し父の中村勘三郎の映画を流した。平成中村座を作ったのは中村勘三郎だが、小倉の舞台にたつことは叶わなかった。その後トークショーが行われ、その収益はすべて寄付にまわした。そして夜の部には歌舞伎が行われた。