子どもたちの教育格差について、保護者の経済状況の違いが学力などの格差につながるという指摘もある中、困難を抱える子どもたちにも学びの場や居場所を提供しようと活動する前橋市の塾を取材した。前橋市に2年前、開校した学習塾では家庭の事情で一般的な塾に通えない県内の小学生と中学生およそ10人が通っている。この塾の特色の1つが授業料。保護者の所得に応じ、無料から最大でも月4000円と低く設定。保護者の収入などに関係なく学びの機会を提供するため。また講師の多くは現役の高校生たちでいずれもボランティアでしてもらっている。塾長の濱松敏廣、48歳は音楽の製作会社を経営しながら前橋市など全国5か所で同じ塾を運営している。背景には自身の子どものときの経験がある。濱松さんはDV家庭で落ち着いて勉強できる環境がなかったという。安心できる場所をつくるため食事も無料で提供している。教育格差に群馬県も危機感を募らせている。県は去年、県内の中学2年生とその保護者を対象に初めて実態調査を行った。それによると成績が下のほうと答えた子どもの割合は収入が高い家庭では29.6%だった一方で収入が低い家庭では53.7%に上った。さらに大学に進学したいと答えた割合も19ポイント以上の差があった。今回、教育格差の問題に直面してきた当事者の声を聞くことができた。県内に住む50代の母親は7年前に離婚し現在、高校1年生の息子を1人で育てている。パートで週5日、勤務し月の手取りは12万円ほど。食べ盛りの子どもに十分な食事を出せないこともある。母親は去年、高校受験を控えた息子のために学習塾を探したが、突きつけられた現実は「何万円」という金額の厳しいものだった。そして、たどりついた場所こそ濱松の塾だった。高校1年生の息子は中学3年だった去年秋からこの塾に無料で通い見事、志望校に合格。今でも自習で塾を訪れている。ただ、今も家計の厳しさは続いていて、高校卒業後は就職しすぐに母親を支えたいと考えているという。困難に直面する子どもたちと日々、向き合う濱松は教育格差の現状を少しでも変えるため子どもたちを支え続けたいと考えている。この塾は主に民間企業や個人からの寄付で運営されているという。