美肌治療や二重整形などを扱う美容医療。クリニック数は右肩上がりに増えるなど市場が拡大。その裏でトラブルも起きている。施術によってけがや病気などの健康被害につながったという相談が、昨年度は901件(国民生活センター)。4年間で2倍近く増加。東京・文京区・日本医科大学付属病院に、日本でも数少ない美容医療の後遺症外来がある。大阪からやって来た30代の女性は、これまでに10回以上美容医療を受けて、自信が持てるようになったというが、去年あご下のたるみを引き締める施術を受けたあとにトラブルが、患部が感染によって一時大きく腫れ上がり、腫れが引いたあとも、凸凹とした膨らみが残ってしまった。この外来には、美容医療の施術後に合併症や後遺症が出た患者が、多いときで1日30人ほど訪れる。治療に当たっている日本医科大学付属病院・朝日林太郎医師は、安全対策に力を入れるクリニックもあるが、「業界が急拡大する中で、経験が浅い技術が不足する医師が出てきているのではないか」と感じている。中には、目の下のクマを取るはずだった施術で、傷痕が残ってしまったケースも。今回、NHKは美容医療による後遺症の治療に当たる医療機関や学会などを通じて、患者にアンケート調査を実施。多くの患者に共通していたのが、リスクの認識が不十分だったこと。回答した27人の患者のうち21人が、「施術を受ける前、副作用や後遺症など、リスクについての説明を受けていない」と回答。アンケートに回答した40代の女性は、出産後に顔のしわが増えたと感じ、目立たなくするためヒアルロン酸注射を受けた。すると顔がたびたび腫れ上がるようになってしまった。後遺症外来を受診すると、アレルギー症状だと診断され、現在薬での治療を続けている。女性が施術を受けた美容クリニックでは、事前に医師や看護師から口頭でのリスクの説明がなかったという。今回のアンケートでもう1つ見えてきたのが、後遺症の治療先がなかなか見つからないという課題。27人の回答者のうち15人が、「施術を受けたクリニックに後遺症の治療の相談をしても断られた」と答えた。中には「クレーマー扱いされた」「ほかの医療機関に行ってくれ」と言われたという声もあった。10か所のクリニックに治療を断られたという30代の男性。目の病気の影響でまぶたの形が変わり、去年、見た目を整える施術を受けたが、まぶたに強い痛みが出るようになった。施術を受けたクリニックでは、後遺症の治療をしてもらえず、ほかの医療機関でも「施術の内容がよく分からず対応できない」と断られたという。ことし1月に後遺症外来を受診したが、まだ回復のメドは立っていない。後遺症外来には、深刻な悩みを抱えた患者が絶えず訪れている。日本医科大学付属病院・朝日林太郎医師は「トラブルが見られるのは一部のクリニック」としたうえで、「利用が広がる今、後遺症に対応する体制の整備が急務だ」としている。
住所: 東京都文京区千駄木1-1-5
URL: http://hosp.nms.ac.jp/
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