お産の危機。切迫早産などリスクの高い妊婦を受け入れるMFICU(母体胎児集中治療室)と呼ばれる集中治療室について。主に地域の拠点となる100か所余りの病院に設けられ、リスクの高い妊婦や赤ちゃんの命を守っている。ところが今、MFICUで医師が不足している。全体の2割近くが国の要件を満たせない事態となっていることが分かった。これによって、病院の収入が減り、医療を維持できるのか、現場の危機感が強まっている。高知県で唯一のMFICUがある高知医療センター。切迫早産や持病があるリスクの高い妊婦などを、年間50人ほど受け入れている。MFICUには、医師や看護師の手厚い体制が必要で、国は体制整備のため、通常の入院より高い診療報酬を支払う仕組みを作っている。報酬を受けるには、専任の医師を配置するなどの要件を満たさなければならない。高知医療センターでは夜間や休日に医師が専任で対応できず、人手が足りない場合は、自宅で待機する医師を呼び出す体制を取っている。国の診療報酬の要件を満たすには、夜間や休日にさらに多くの医師を確保する必要があるが、日中の体制が手薄になってしまうため、難しいという。国の診療報酬要件を満たせない病院は相次いでいて、専門の医師の団体の調査では、MFICUを持つ全国100余の医療機関のうち、2割近くとなる18か所に上っていることが分かった。日本大学医学部・田倉智之主任教授は、医師の確保や病院への財政支援が必要だと指摘する。