日本の棚田百選「うへ山の棚田」や山あいに広がる自然豊かな街並みが広がる兵庫県香美町小代区。ビニールハウスでスッポンの養殖場を営んでいるのは兵庫県米子市出身の安藤優汰さん(24)と北浦雄亮さん(27)。スッポン養殖はおよそ50年の歴史があるが高齢化もあり続けているのは小代内水面組合の組合長・増田時雄さん(80)ただ1人となっていた。体力の限界を感じ始めていたが話を聞きに来た安藤さんたちへ事業承継することを決めたという。増田さんはほかにもキャビアを作るためチョウザメの養殖を行い、安藤さんたちはこれも引き継いだ。安藤さんは大学1年の時、明治神宮大会で準優勝、社会人でもプレーしドラフト候補にも挙がっていたが新型コロナが彼の人生を変えた。コロナの後遺症になり安藤さんは家族のためにも野球に見切りをつけ、第2の人生として考えたのは元々好きだった魚にまつわる仕事。知り合いにスッポン養殖のアイデアをもらい、幼なじみで東京で会社経営をしている北浦さんを誘って増田さんのもとを訪ねたという。北浦雄亮さんは「お互い釣りが好きだったので、陸上養殖と言われた時は、おもしろそうだというふうに率直に思いました」と話す。2人は今年1月「月とすっぽん」という会社を設立。安藤さんが現場を、北浦さんが経営を担当し、これまで増田さん1人では手が回らなかった顧客開拓などにも取り組むようになった。増田組合長は「やっぱりわしらのできんことをやってくれるからね。でもまだ分からんことがいっぱいあるからね。どんどん前へ進んどるけどちょっとブレーキもかけてやらんといけんところもあるし」と話す。いまでは京都の料亭などでも安藤さんたちのスッポンが使われるようになったほか、スッポン鍋セットやチョウザメの切り身、キャビアなどのネット販売も好評だという。北浦さんは「ほかの若い方にも、自分たちで事業を起こすだけじゃなく、ほかの方から引き継ぐという事業承継もひとつの選択肢として持ってもらえると、今後(後継者不足の)社会問題を解決していけるんじゃんないかと思って」、安藤さんは「日本も越えて海外とか世界的な人気商品になっていけるようなものを作りたいです」と話す。