東京五輪の選手村を改修した晴海フラッグ。分譲マンションは、東京都が住宅を必要とするファミリー向けに、都の所有地を開発して作った。しかし投資目的で購入されるケースが相次ぎ、3割以上の部屋で居住実態が確認できないことが明らかになった。ことし1月から入居が始まっている晴海フラッグは、土地を所有する東京都が、総事業費約540億円をかけて道路などを整備。11の民間事業者がマンションなどの建設を担い、都が事業全体を監督している。5年前に販売が始まった晴海フラッグ。販売時の抽せんは、最高倍率が266倍に達した。周辺相場と比べ割安だったことなどが理由。しかしNHKが登記簿をもとに所有者を調べたところ、最も戸数の多い1089部屋が入る街区では、全体の4分の1以上の292部屋が法人名義で取得。東京のマンションが高騰する中、不動産仲介サイトでは、元値の1.5倍から2倍ほどで転売に出されている。晴海フラッグの部屋を5戸以上購入し、賃貸物件として運用している法人の代表。法人の代表は「魅力は三方を海に囲まれた開放感。どの住戸を買っても大正解。利回り的には非常に高い」と語った。賃貸や転売に出された部屋が供給過多になり、空き部屋が数多くあることも分かってきた。法人の代表も、86平方メートルの部屋を家賃44万円で賃貸に出しているが、借り手が見つかっていないという。法人の代表は「(賃貸募集の部屋)300戸は空室のまま募集されている」と語った。NHKの取材では、分譲マンション2690戸のうち、マンションがある東京・中央区に住民票が登録されていたのは、今月1日時点で1747戸。残る3割以上の943戸に住民票の登録がなく、居住実態が確認できないことが分かった。借り手が見つからない中、物置などのレンタルスペースとして貸し出されているケースもある。チラシを見ると、部屋を区切った5畳ほどのスペースが5万8300円。マンションの住民を対象に、借り手を募集。入居を希望していた60代の夫婦は、抽せんで7回落選。諦められず、転売予定の部屋を見学に行った。販売当時6000万円だった部屋は9000万円に。予算的に手が出ず断念したという。夫は「五輪のレガシーを資産運用とかいった意味で使ってほしくない」と語った。こうした事態について東京都都市整備局市街地整備部・井川武史部長は「最寄駅から20分である立地特定とか、本当に販売に懸念があった。投資目的で買われている状況とか、当時の段階では想像できなかった。対策を講じることに対して、検討されていたことはない」と語った。東京都の対応について、明治大学・野澤千絵教授は「一定割合、住民票を移して、マンションに住む人が一定割合以上になるようなコントロール、最初から事前明示でルールを作っていく事は必要だった。頑張ってローン組む人が住めない街でいいのか、東京都として考えないといけない」と述べた。