東京大学のシンボル・安田講堂をバックに学生たちが授業料の値上げ反対を訴えている。いま東大の授業料は文部科学省令が定める標準額の53万5800円だが、物価高騰と教育環境の向上に対応するため、約10万円の値上げが検討されている。東大の調査によると東大生の親の年収は4割以上が1050万円を超え、親の年収が450万円未満の学生は14%にとどまる。生活保護世帯から東大進学を目指す人もいるが、そこには大きな壁が立ちはだかっている。現在、数学の研究者として海外で暮らす男性は、当時、大学に進学するためには生活保護の対象から外れ、授業料や居住費などを自ら支払わなければならなかった。無事に合格したが、授業料免除の申請が通らないかもしれないという不安を抱えながらアルバイトでお金をためる生活が続いた。男性は「経済的に厳しい人の実情も踏まえたうえで、よい制度とはどのようなものなのか議論を進めてほしい」と話していた。東京大学は授業料を値上げする場合は経済的困難を抱える学生への配慮は不可欠で、授業料免除の拡充や奨学金の充実などの支援策も併せて検討している。