ことし11月、日本で初めて聴覚障害がある人たちの国際スポーツ大会、デフリンピックが開かれる。耳が聞こえない選手のために使われるのがこちらのスタートランプ。陸上のスタートの合図を光で知らせる機器で海外でも使われている。開発したのは都内のろう学校の教諭。開発にかけた思いを取材した。陸上で使われるスタートランプ。2016年の国際大会で初めて採用され国内外で使われている。スタートランプが導入される前、大学で開かれた競技会の様子。聞こえる人も出場する中、ピストルの音が聞こえずスタートを切れなかった選手の様子が映っている。またこちらの7レーンの選手は走りだす前の腰を上げるタイミングが分からず、周りの選手についていけませんだった。聞こえない選手は周りの様子を横目で見るなどしてスタートするのが当たり前だった。開発した竹見昌久さんは都内のろう学校の教諭で20年前から陸上部の指導をしている。スタートランプを開発するきっかけとなったのは指導していた女子生徒が涙ながらにこぼしたあることばだった。聞こえない選手のハンデをなくすために竹見さんは陸上競技の専用メーカーに協力を仰ぎ2012年にスタートランプを開発した。しかし大会関係者にはなかなか受け入れてもらえなかった。ランプの必要性を伝えようと竹見さんは国内外の国際大会に出向いて性能を売り込んだ。こうした熱意が実を結び開発から4年、国際大会で初めて採用され徐々に広がっていった。聞こえない選手たちにとって今やスタートランプは欠かせないものとなっている。スタートランプは各地で導入が始まっているが扱える人はまだ限られている。竹見さんは大会を開催する自治体などに向けて使い方を教える研修会を開いている。開発から13年、竹見さんはスタートランプから聴覚障害への理解がさらに進んでいくことを期待している。選手たちに聞いたところ横の選手の動きを見てスタートできてもおよそ0.3秒、距離にすると3メートルほど遅れるということでこの差を埋めること、努力をしてきたと話していた。江原啓一郎、寺門亜衣子らは、環境が整っていないことでこうした活躍の機会が狭められている状況は、どうにかなってほしいなと思う。それに今、私たちが気付いていないだけでほかにも同じようなことがあると感じます。竹見さんが生徒から気付きを得てスタートランプを開発したように11月のデフリンピックはこうした現状に気付く1つのきっかけになると思う。デフリンピックを機に聴覚障害者を取り巻く環境に関心を持ってもらってさまざまな社会の課題の解決へつながってほしいなと思うと語った。