相場英雄&佐々木アナが岐阜県土岐市にある核融合科学研究所を訪れた。今回取材する開拓者は核融合科学研究所から新たに立ち上がったスタートアップ企業「ヘリカルフュージョン」の後藤拓也副CTO。まずは研究所の担当者が実験プラントを案内してくれた。核融合を起こすために必要な1億℃のプラズマをつくる巨大な装置があった。後藤は「核融合発電は火力発電の1500万倍、スプーン1杯分の燃料で8トンの石油タンカーと同じエネルギーが出せる。原子力はウランのような重くて大きいものを割った時に出るエネルギーを使うが、核融合は逆で軽いもの同士をくっつけた時のエネルギーを使う」と説明した。核融合発電の燃料になるのでは入手しやすい海水に含まれる重水素や三重水素など。放射線量は低いが膨大なエネルギーを生み出し、原発に匹敵する発電が可能だという。核融合を起こすには炉の中のプラズマを1億℃に保つ必要がある。この施設では強力な磁場を作る螺旋状のコイルでプラズマを覆って安定させる「ヘリカル式」を採用している。日本では核融合の研究が70年以上も前から行われてきたという。核融合科学研究所で研究を続けてきた後藤は2021年にヘリカルフュージョンを起業。世界初の核融合発電の社会実装を掲げた。着実に積み上げてきたものがようやく見えるところに来たという。原子力発電は制御不能になっても核分裂が継続して危険な状態になるが、核融合発電は燃料注入を遮断すれば停止できるという。
核融合発電は電力革命を起こすと期待されているが、実用化には2つの課題があった。核融合で発生した熱エネルギーを受け止める金属の壁をブランケットと呼ぶ。熱で水を蒸気に変えて発電するが、ブランケットは受け止めるエネルギーが膨大なため、すぐに損傷してしまう課題があった。後藤たちは液体金属で膜を作ることで耐久性を維持する技術の開発を進めた。ことし3月に取材した実証実験の映像を紹介した。金属の配合や温度の研究が続いている。もう一つの課題がプラズマを閉じ込める二重螺旋上の超伝導コイルをどう作り上げるか。国内企業と共同開発を進め、フジクラ製「蛇腹式コイル」は厚さ数ミリの銅を150枚重ねることでパワーと柔軟性を獲得。7月18日にはコイル部品の共同開発に向け東芝子会社と基本契約を締結した。ヘリカルフュージョン・田口CEOは実験を終えるのにあと5年、10年くらいで実用化したいと語った。ヘリカルフュージョンは7月に23億円の資金調達を発表。2030年代に核融合発電を実用化し、「前人未到の実装」を目指す。
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核融合発電は電力革命を起こすと期待されているが、実用化には2つの課題があった。核融合で発生した熱エネルギーを受け止める金属の壁をブランケットと呼ぶ。熱で水を蒸気に変えて発電するが、ブランケットは受け止めるエネルギーが膨大なため、すぐに損傷してしまう課題があった。後藤たちは液体金属で膜を作ることで耐久性を維持する技術の開発を進めた。ことし3月に取材した実証実験の映像を紹介した。金属の配合や温度の研究が続いている。もう一つの課題がプラズマを閉じ込める二重螺旋上の超伝導コイルをどう作り上げるか。国内企業と共同開発を進め、フジクラ製「蛇腹式コイル」は厚さ数ミリの銅を150枚重ねることでパワーと柔軟性を獲得。7月18日にはコイル部品の共同開発に向け東芝子会社と基本契約を締結した。ヘリカルフュージョン・田口CEOは実験を終えるのにあと5年、10年くらいで実用化したいと語った。ヘリカルフュージョンは7月に23億円の資金調達を発表。2030年代に核融合発電を実用化し、「前人未到の実装」を目指す。
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住所: 岐阜県土岐市下石町322-6
URL: http://www.nifs.ac.jp/
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