鹿児島県鹿児島市桜峰小学校ではほとんどの授業でタブレットを使用している。鹿児島市は2020年度から各小学校に1人1台タブレット端末を整備、ICT、情報通信技術をつかった教育を日々の授業から積極的に活用している。教室での座学だけではなく、水泳の授業ではプールにタブレットを持ち込み児童同士で泳ぐ姿を撮影、泳ぎ終わるとすぐに動画を見てフォームを確認しこどもたちが自分で課題に気づき解決する学びに繋げている。授業で学んだ内容を宿題で「復習」するのが一般的だが桜峰小の宿題は次の日の授業の「予習」で前の日に翌日学ぶ学習内容のヒントをもらった上で家に帰ってタブレットで予習し先生に送信する。授業では予習してきた内容をほかの児童に説明、先生は子どもたちの理解度やつまずきやすい点を事前に把握したうえで授業で重点的に教える仕組みという。「対面」と「オンライン」を組み合わせたハイブリッド型授業はコロナ禍を機に高校や大学で普及が進みつつあるが、小学校ではまだ少ないのが現状。持ち帰ったタブレットやネット環境がない家庭に貸し出しているルーターを「学習以外に使わない」というルールの徹底などが難しいことから家庭学習でタブレットの運用を見送っている学校もあるそう。桜峰小学校が児童に行ったアンケートでは去年から今年にかけて「進んで学習に取り組んでいる」と答えた子どもが3倍に増えたほか、標準学力調査での偏差値は去年までの3年間で8ポイント上昇、先生の働き方にも変化があったという。手作りしていたプリントなどはAI機能を搭載したデジタルドリルになり自動で出題、採点をしてくれるうえ児童の苦手な問題の傾向を学習し類似問題を出す。高橋愛梨教諭は「夏休みの宿題を作る時間はだいぶ無くなった。簡単で印刷もしなくて良い」と話し夏休み前に宿題の作成に追われる負担が軽減されたほか、児童がドリルに取り組んだ時間や達成度はデータ化されるため通知表をつける際の参考にすることもできる。文科省のデータでは公立小学校の教員の時間外在校等時間の平均は1か月およそ41時間だが、桜峰小では26.6時間と4割ほど短くなっている。桜峰小学校は来年度末に閉校し2026年春「桜島学校」に統合するが学校でのICT活用事例を広く発信し今後の教育現場でも役立ててほしいという。大迫誠校長は「教員不足とかいろいろと言われているが学校はすごく楽しいところ。桜峰小学校の先生はいきいきしている、みんな明るいと発信していきたい」と話した。学校は取り組みの成果などをとりまとめ、今年秋に鹿児島県内の各学校向けに発表する予定。