福島からリポート。東日本大震災と原発事故で多くの担い手がふるさとを追われ、民俗芸能の継承が難しくなっている。先月双葉町で民俗芸能の発表会が開かれ、川内村の獅子舞「町獅子」や双葉町の「三字の神楽」など4町村に伝わる10の演目が披露された。催しを企画したひとり、東日本大震災原子力災害伝承館常任研究員・葛西優香さんは大阪府出身で、4年前に浪江町に移住し地域の伝統文化を研究している。浜通り地方にはかつて地区や神社に400もの芸能が受け継がれ、そこで暮らす住民たちの心のよりどころになっていたが、原発事故で避難指示が出された地域の住民は散り散りになり、途絶えた芸能もある。浪江町の樋渡牛渡地区では、地域に新しく移り住んだ人たちを取り込んで維持に努めていて、原発事故で一時途絶えた「田植踊」が神社の再建に合わせて5年前に復活した。踊りの復活に尽力した保存会の前会長・鈴木美智子さんはことし1月に急逝したが、鈴木さんたちの情熱を見てきた担い手たちは思いを受け継ぎ、新しい体制で踊りを続けることを決めた。