斎場をあとにした孝之くん夫婦は途中で銀行に立ち寄ってからお父ちゃんの家にやってきた。晃さんは自分の預金の管理を長男に任せている。おろしたのは50万円、葬儀費用だった。続いて孝之くんたちはお母ちゃんの暮らす家に。お葬式が終わったらお骨を置くのはここ。祭壇を作る場所が必要だった。大掃除して準備をする。告別式の朝、長女の奈緒子さんがいた。長い間、顔を見せなかった長女が帰ってきた。家に帰ってきたのは約13年ぶり。高校3生の奈緒子さんはいつもちょっと不服そうだった。お母ちゃんは幼い弟たちにかかりっきりで年長組は自分でお弁当を準備していた。奈緒子さんは高校卒業後、全寮制の管理栄養士の専門学校に進学した。不安や寂しさはあった。家を出る朝、学校までお父ちゃんが送ってくれた。別れ際にお父ちゃんはお金を渡した。26年前、成人式の日は元美容師のお父ちゃんとお母ちゃんが腕をふるった。専門学校4年目、目指してきた管理栄養士とは別の道へ進みたいと考えるようになった。卒業後、奈緒子さんは一人暮らしをはじめた。奈緒子さんのよき理解者がみさ子さんだった。奈緒子さんも46歳、パートナーと宮城で暮らしている。一番喜んだのは隼司くんだった。お父ちゃんはさり気なく用意したお香典をお母ちゃんに渡した。そしてあの50万円も渡した。冠婚葬祭は一族再会の場となった。葬儀での千惠子さんの挨拶には万感の想いがこもっていた。家族におくられてみさ子さんは旅立った。
