2023年2月、河津町にとって特別なときを迎えていた。行動制限のない河津桜まつりが開かれた。来場者は約51万人。火災のあった天城荘では時が止まったままだった。ただ露天風呂だけはいち早く開業した。これまでにも存続の危機があった。バブル期には年間約10億円の売り上げだったがネット対応の遅れなどで低迷し経営破綻に追い込まれた。そのときに買収したリバティーの福原さん。リバティーは全国約4000の小規模宿泊施設の集客を支援している。ノウハウを結集し天城荘の再生に挑んだ。改革は実り数年で黒字となった。コロナ禍を入り、乗り越えこれからという時期の火事だった。2023年3月、福原さんにとって2度目の天城荘再生となった。こだわったのは歴史ある旅館の佇まい。しかし火災のダメージは凄まじいものだった。さらに入り組んだ構造・耐震性が復旧の行く手を阻む。2023年5月、解体が始まった。解体の様子を見守るベテラン・下川孝子さん。火災の被害は約11億円にのぼり、保険金は約5億円で足りない。福原さんにとって心配事は天城荘だけではなく、前立腺がんの疑いがあり治療を続けている。命をがけの再生だった。